「私ってほら、○○な人じゃないですかあ」
という言い方をする人がいます(特に女性に多いような気がします)。○○の部分には「わがまま」だったり「欲ばり」だったりその人を特徴付ける言葉が入ります。いかに自分が個性的な人間であるかをぐいぐいとアピールしてくるんですが、
初対面でそんなこと言われてもねえ。
その人がどんな人か、なんていうのはお付き合いしていく中でこちらが探っていくことですから、いきなり自分自身でラベルを貼ってしまうのはどうかと思いますよ。
今回読了したのは村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」です。昨年の発表時は大きな話題になりましたね。図書館で借りることができましたので、遅ればせながら読んでみました。
「多崎つくる」は自分が色を持たない、空っぽの人間だと信じている中年手前の男です。そんな彼が、新しい人生を出発させる為に、若い日に負った心の傷と改めて向き合っていく、というお話です。
村上春樹さんの作品の舞台となる世界は、僕の世界とかけ離れていることが多くて、リアリティを感じることが出来なかったりします。この作品もそうなのですが、主人公が色彩を持たない(と思っている)ことで、とても身近なお話としてこの本を読むことが出来ました。
おそらくあなたも「多崎つくる」を身近な隣人としてみることが出来るはずです。あなたが「私ってほら、○○な人じゃないですかあ」とか言いがちな人でなければ。
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。皆さんも読んでみたらいいのに。