| こんにちは、中村です。 
 先日家人とお出かけした折のことをお話しします。 寒さに震えつつバスを待っておりましたら、一人の女性に声を掛けられました。推定60代前半くらいでしょうか。目に眩しい鮮やかな青いコートを着ていらっしゃいました。
   「次のバス、どのくらいで来るカナ?」   時間どおりならあと5分くらいである事を教えて差し上げました。   「ありがとうね。○○から来たからよく分からなくて」 
 ○○は四年前のあの震災で大きな被害を受けた東北の街の名です。 
 「私の周りで45人亡くなったの。赤ちゃんもだよ。まだ6ヶ月くらいなのに」 
 はっと胸を突かれました。この人は大変な経験をして、ここに居るのだな。かける言葉が見つからず口ごもっていると、女性はさらにたたみかけます。
 
 「私、今パンツはいてないの。寒ーい」 
 …え? 
 あまりの脈絡のなさに思考停止です。 聞き間違いかとも思いましたが、そっと窺うと家人も同じように面食らった表情。   「45人亡くしてね。赤ちゃんもいたの。可愛かったのに」   やっぱり錯覚だったんだな、と思った瞬間、   「パンツ買って。そこの100均で売ってるから。ねえ、パンツ買ってよ〜」   聞き間違いじゃありませんでした。 
 その後も震災の辛い体験や、今日が彼女の60歳の誕生日である事、実年齢は92歳だけど50歳くらいに見られること(60歳の誕生日じゃなかったのかよ!)など一方的に話しつつ、合間合間に 
 「ねえ、パンツ買って〜」 「奥さんはパンツはいてるでしょ?羨ましい。私寒い〜」 「100円のでいいから買って〜」   と、ぶっこんできます。 その度に聞こえないふりでスルーしましたが、それから数週間経った今でも考えます。   買ってあげた方が良かったのかな? 
 女性はその後我々と同じバスに乗り、当初言っていた場所よりもずいぶん手前の停留所で降りて行きました。降りる時我々に軽く会釈した彼女の顔は、どことなく寂しそうに見えました。   きっと気のせいですけど、とても寂しそうに見えたのです。   で、このお話とは直接関係ありませんが、画像はモノを買うときの男女の思考の流れの違いを表しています。半ばジョークなんでしょうけど、分かるような気もしますね。 最近では「SNSで投稿したときの周囲の反応」 というのもこのチャートのどこかに入るんじゃないかと睨んでいます。
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